北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

ヤダーの声調

正直なところ、私の相棒は、日本との縁が深く、日本人との付き合いも長い割には、
いまだに日本語があまりしゃべれない。

そもそも私が
日本語が嫌いになるよりは、楽しく自然に勉強してくれた方がいいや
と都合良く言い訳して、厳しく教えていないのも悪いのだけれど。

そんないい加減さが功を奏してか(?)
だしぬけに相棒からユニークなコメントを聞くことがある。

私が相棒のある行為を前に
「ヤダ〜、やめてよ〜」
と悲鳴を上げてたしなめた時のこと。
(行為の詳細については相棒の名誉のため、黙秘)

相棒が
「嬉しい時と嫌な時の『ヤダー』は声調が違うだけなんだな」
と勝手に納得し始めたのだ。

「ん?何のこと」
「だって、嬉しいことがあった時、ヤダーって(後ろ上がりに)言ってたじゃないか」

「それは、ヤッター!だよ」
そう言いながら私は思わず「バンザイポーズ」をする。

と、そのとたんに思いだした。中国語を母語とする人にとっては、日本語のタとダの差はあいまいに聞こえる。促音「っ」の有無もまた同じだ。

そうなると、あのタイムボカンシリーズのヤッターマンも、
うっかりすればヤダ〜マン?
日本語って難しい。