北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

雨の晩に思ったこと

おととい、中国の人々にとってとても大事な方が亡くなった。
中国でも、すごく多くの知人が、いろんな形でその知らせや
彼への追悼文を発表していて、少し驚いた。

もちろん彼のことはここしばらく注目されてはいたけれど、
それは中国以外のメディアでの話。
しかも、今回の発信者の中にはこれまで何も、
彼について発信してこなかった人が多い。

その勇気なくしては書けない言葉を読んでいると、
偉大な活動家というものは往々にして、
肉体の死をきっかけに、むしろその魂は力を集めていくのでは、
と思ってしまう。

六四の晩は天が泣くというけれど、
実は今年の北京では雨が降らなかった。
彼のことが気になって天も泣けなかったのか。

でも、昨日の晩と今日の晩は降っている。

さて、ここ数日、
北京はまさにうだるような暑さ。

中国では、重慶、南京、武漢の三都市が、
夏の蒸し暑さによって知られ、「三大かまど」と呼ばれているが、
6月にちょくちょくこの三つの都市と北京の気温を比べてみたら、
南方では大雨による大洪水なども起きたせいか、
北京の方が暑い日が多かった。

ああ今日もやっぱり北京の方が高い、と思っていたある日、
我が家の扇風機が自滅。
暑さに限界がないんで、疲れ果てちゃったんだろうな、きっと。

で、その後は、気温を比べるのをやめた。
比べることは、不幸のはじまり。

そんなことを言いつつも、
中央アジアのある場所では48℃だったと聞くと、
31、2℃そこそこで、
つい涼しい場所に逃げたくなってしまう、
自分のやわさに後ろめたさを覚える。

でもまあ、言い訳をすれば、
程度の差こそあれ、地球のあちこちが以前より暑くなっている。
北極だって氷がずいぶんと融けているらしい。

大事なのは、ヒートアイランド現象などの個人個人の努力の積み重ねで変えられるかもしれない部分に協力をしつつ、
自分の生活までは壊れないようにすること。

環境活動家のシンパであり続けながら、
自分にできる日々の仕事もきちんとこなすこと。

シンパがたくさん存続できてこそ、
活動家が何かをしようと思った時、事がちゃんと動く。

そう信じるしかない。