北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

消火器景気

朝、いい青空だな〜と思っていたら、昼には薄黄色のもやが。
無数の車たちが、空に屁やおしっこをひっかけているイメージが浮かんでしまう。人だと「はしたない」なのに、車や煙突だと堂々かつ公然とひっかけられるのが不思議だ。

ところで、不幸な事件から教訓を得ることは当然だし、そうあるべきなのだが、
何だか複雑な気持ちになるのが、その教訓によって景気が良くなる人々がいること。

上海のマンション火災の後、もともと火災要注意の北京でも、消火器が急増した。この間開かれた本の市では、消火器があちこちにひと塊りになって置かれていて、ブースによってはとても目立つ位置に消火器がぶらさがっていた。

また、私の住む四合院の敷地にも、消火器を置く箱が設置され、消火用の水道のある場所にも真新しいプレートが貼られた。

ところで、その消火用水道のある場所は我が部屋の真正面。私って安全な場所に住んでいたのね、と安心するとともに、これまで自分がその存在を全然知らなかったことにあきれる。

消防隊の人々は知っていたんだろうか??院の誰かが知っていたとしても、火災が起きた時にその人がいなかったらどうすればいいのか??

ま、いずれにせよ中国の消火設備は、小型の安い消火器なら500円ぐらいなので、消火器屋もそこまでぼろ儲けという訳ではないだろうが、ただ売るだけでなくて、せめてこの機会に使い方の指導とか、設置場所の通知とかを、もっとやったらいいのに、と思う。

我が家の近くの四合院の奥の敷地で前、火災が起きた時、消防車が入れないため、住民が一致団結してバケツリレーをしたのだとか。その団結の力もすばらしく貴重だが、すでにある文明の利器を使えば、もっと安全度は増すはず。

そういう私も、消火器の使い方なんてすっかり忘れてしまった。今度消火器屋さんで聞いておこうっと。