北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

初盆出張旅行記 その一

長らくブログをお休みしてしまい、すみません。ほぼ8月いっぱい、出張、取材、帰省を兼ねて、日本と中国のあちこちを移動しておりました。

というわけで、今日から数日、その道中をご紹介します。

まず出発は北京駅。

えっ。帰省なんだから日本に行くんじゃないの?と言われそうですが、実は今回は上海経由。

でも、春秋航空に乗るためではありません。その理由はまた今度ということにして、

ここでまたつっこみ。上海行くなら、和諧号なんだから、北京南駅じゃないの?

いえいえ、今回は特快列車でした。和諧号が開通した後も、北京―上海間の鈍行(といっても、ひと昔前まで一番速かったタイプですが)は走っているのです。12時間以上かけて。

先回和諧号に乗って、とても便利だったけれど、やっぱりゆっくりめの列車の方が面白い、と思ったため、経費節約もかね、今回はこちらを利用することにしたのでした。

しかし今回は、乗るまでだけでも十分たいへんでした。まずは夏休みだからか、寝台切符が予約できず、やむなく硬座と呼ばれる二等座席に変更。でも、ここまでは「よくあること」。北京―広州間を硬座で移動したこともある私たちなので、何てことはありません。でも問題は乗車当日。相棒が重大な忘れ物をしたため、それを取りに戻っている内に、もともと余裕のなかった発車までの時間が、まさに「ぎりぎり」に

ホームに着いた時は、すでに発車の2分弱前でした。

中国の列車はやたらと長いので、とても予約した座席に行く余裕はありません。ホームの車掌さんも血相を変えて「早く早く」とせきたてるので、予約した車両の十五両くらい後ろの車両に飛び乗ることに。

すぐに列車は発車。しかし、予約した座席の遠いことといったら。

途中にクーラーのきいた気持ちよさげな食堂車があったため、まずはひとやすみ。
そこですっかりくつろいでしまうと、もうここでいいか、という気分になり、結局、そこに朝まで乗っていました。夜中の発車だったため、利用客がほとんどいなかったからです。車掌さんも切符をチェックした後、まあいいか、という感じで去って行きました。

とはいえ、やっぱり気弱な私たち。きちんと「消費」もしました。

写真は食堂車弁当。ご飯が微妙に玄米っぽく、おかずなんかはちょっと日本の駅弁も意識しているようで、まあまあでした。けっしてわざわざ食べに行くほどの味でもありませんでしたが……。

それにしても、食堂車でのオーバーナイト・ステイ。人が少なかったので、横になることもでき、なかなかの居心地でした。

驚いたのは、車両が新品さながらにピカピカだったこと。全国的に食堂車は減っていると聞いていたので、意外でした。食堂車担当の乗務スタッフも、きっと選ばれた人だったのでしょう。サービス・スマイルが素敵な、きれいなお姉さんでした。その周りが同列車の男性乗務員の憩いの場になっていたのは、偶然ではないはず……。

食堂車にずっといることが許されたのは、私が松葉づえを持っていたから、というのも多少あるかもしれませんし、もともと買っていたのが「無座(座席なし)」の切符だったら、追いだされたのかもしれませんが、私の周りにも数人、食堂車で寝ている乗客がいたので、決して特別なお目こぼしではなかったようです。実は食堂車利用は席に困った時の「マル秘技」かもしれません。

みなさんも、もし硬座が遠すぎたり、隣に変な人がいて居心地が悪かったりしたら、ぜひ試してみてください。

深夜の食堂車という、いかにも中国らしい、ゆるい、「隙間」の空間を……。