北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

ニュースで妄想

さっき、2月が28日までしかないことを思い出し、慌てている私。確か、去年もこんなことがあったような。

中国のニュースは、いろんな読み方ができて、ほんとうに面白い。
今日、中国のテレビで、在アルゼンチン華僑が地元のマフィアに苦しめられていたので、中国の公安が地元の警察と協力して問題を解決し、一帯の治安を向上させました、というドキュメンタリーをやっていた。

アルゼンチンの警察も喜んで逮捕に協力してもらった、ということになっている。こういうこと自体は、前例のないことではないのかもしれない。それに一見、円満解決のハッピーエンド・ストーリー。

だけど、何かひっかかる。

海外の自国民が被害を受ける→保護の必要→本国の警察出動→円満解決

という筋の3つ目が「軍隊出動」に変わったら、既視感のある、かなりきなくさい話になるのでは?

それに、今回はアルゼンチンが舞台で、保護の対象になったのも、新たに進出した華僑のようだけれど、今や中国系の人たちは世界中にたくさんいて、国籍は中国でも、外国籍の取得を目指している最中だったり、あるいはアイデンティティ的に限りなく外国人に近いような人もいる。彼らが中国政府の保護を必要とする中国人か否かの境目はかなりあいまい。もし、彼らを全員「保護」しようとしたら、中国はアメリカに負けないくらいの「世界の警察」になれちゃうはずだ。

さらにいえば、このケースはアルゼンチンが舞台ということで、今後はともかく、当面の不安要素は少ないけれど、これがもし日本だったら?

自分の身に置き換えてみても興味深い。かりに北京がとんでもなく治安の悪い状況になり、日本人ということで何らかの危険にさらされたとしても、そこに日本の警察が乗り込んできて、問題を解決してくれたとしたら、ほっとする以上にぎょっとすると思う。へんなしこりも残りそうだし、リベンジも起きそうだ。

現地の華僑だって、ほんとうに手放しで喜べるのかな?ちゃっかり追加でインタビューしたくなる。

そんなわけで、ちょっとしたニュースで、いろいろと考えさせられてしまった。ほんとは一時帰国の日が迫っていて、そんなひまないんだけど。何で2月は日が少ないんだ!!