北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

四合院の古樹のゆくえ

北京では、先週末、中国(北京)国際園林博覧会が始まったこともあり、緑に関する話題が盛り上がっている。
実は現在、連載をさせてもらっているNHK「まいにち中国語」ラジオテキストの口絵写真&コラムもテーマは「みどりの中国」。

この発売されたばかりの6月号の内容には、じつはちょっとほろ苦いエピソードがある。
その背景は、胡同の再開発が進む中、そこに根を張ってきた古樹も行き場を失っているという事実。
それらを何とか生かし続けようと、盆栽作家が盆栽に仕上げたものが、その庭にいくつも残っているということ。
でも、すべてが生き残るわけではないのだそう。

園林博覧会は、園芸好きにはそれなりに面白い催しらしく、伝統的な庭園を建物ごと再現したところがたくさんあるらしい。そのいくつかはレベル的にもまあまあのようなのだが、やっぱり庭園は時間が作る面もあるのか、いかに上手に再現していても、どこかうすっぺら。特に、植えたばかりの樹木の貧弱さが、どうしても覆い隠せない欠点となっているように見える。

今の時代の中国で延々と繰り返されている、「本物を軽々と壊し、偽物を一生懸命つくる」という営み。
逆らうのはたいへんだけど、せめて、記憶を留めることには尽力したい。