北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

今日の夕食

近所の子供リャンリャン(仮名)との共作。
「さあ、何作ろうか?」
お腹が空いている私と、食いしん坊のリャンリャン、食べたいものはどんどんと出てくる。
「タンフール―(さんざし飴)」
「お、さすが北京育ち。好きなの?」
「大好き!」
「それじゃあ私も、ヤンロウチュアン(羊のシシカバブ)!」
「リャンリャン、他にも作ってよ」
「餃子!」
「具は?」
「ウイキョウ!」
ふたたび「さすが」と唸るも、そこらへんでリャンリャンのシェフ熱は終わり。

いつもの流れなんだけど、その日も私の方が夢中に。
「お魚に、果物……。うーん、ご飯が作れない、白い粘土がない!」

いつしか、お絵描きに移行したリャンリャン、聞こえないふり。

「何で白いご飯が作れないのかな〜。お魚も何だかまずそうな色だなあ」

口に出しては言わないが、心の中で「餃子も何だか、抹茶味の八つ橋みたいだよね〜」

だが実は、
白い粘土は存在していた。数週間前までは。

近所の男の子、バオバオまで乗り込んできて、我が家の机の下が二人の隠れ家になった日のこと。
隠れ家から出てきた二人は、私と粘土遊びを楽しみながら、動物シリーズを完成。

だが、

私が夕食を作ろうと離れた隙に、二人は粘土の取り合いで喧嘩。最初に手を出したのは、ちょっとだけわがままなリャンリャン。

とばっちりを受け、一体化していくウサギと猫とへびとエイリアン。

白い粘土はピンクになり、抹茶色になり、やがてネズミ色になり……。
今日、まずそうなお魚に生まれ変わったというわけです。

というわけで、
みんな仲良くしなくちゃ、おいしいお魚も白いご飯も食べられなくなるんだね、というお話でした。