北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

カメは無国境

先回の帰省中、親戚を連れて地元めぐりをした。

コミュニケーション不足が常態化し、もはや不足とも認識していない我が家では、相棒と私は、どこに連れて行かれるかまったく分からないまま、車の後部座席に乗り込んだ。

最初に行ったのは、浜松の航空自衛隊基地にある「エアーパーク」。

展示室にはパネルや飛行機のエンジンなどの実物、そして模擬操縦ができる装置などが並ぶ。
シアターの設備の良さには驚いた。プラネタリウム的空間で空を飛ぶ感じで、当然迫力がある。
次に広い展示室に行くと、いろんな飛行機がずらりと並んでいた。飛行機のことは良く分からないが、実際に座席に座らせてくれ、写真まで撮れてしまうのは全国でもここだけらしい。なら、乗ってみるに越したことはない、とよっこらしょ。意外と深くて乗りづらいが、シアターと同様、いろんなことをごちゃごちゃと考えず、ただの空を飛べるマシーンだと思えば、それなりに面白い。

そもそも科学技術にはそういう面がある。そこで思考を止めてはいけないのだけれど。

展示室の中にはいわゆる「ゼロ戦」もあった。「防衛装備機器の保存活動に些かでも寄与できれば、との思いを込めて」寄贈されたものらしい。
子供たちの「空を飛ぶ夢」がこういう場所で育まれる、というのはどうか、と思ったけれども、歴史の勉強にはなった。ただそこには、このタイプの飛行機が担った歴史や戦争への言及は一切なかった。

見学を終え、また車に乗り込むと、今度は車は御前崎の方向に走っていく。「げげっまさか浜岡原発?これって敏感名所めぐり?」と若干緊張した。

見学できるのは知っていたし、これを機に勉強すべきとも思ったけれど、「今という時代について考えましょう社会見学ツアー」にいきなり雑多な構成からなる家族や親戚たちを巻き込むのはちょっと無謀な気がした。

が、幸い車が到着したのは御前崎の灯台。
小さいが、かなり歴史の古い灯台で、1874年明治7年の建造だという。

入り口のおばちゃんに、「足が悪い人は止めた方がいい」とはっきり言われたので、登るのは
控えたが、他の人が登っている間に眺望台から太平洋を眺める。

100円のコインを入れて望遠鏡を覗く。当たり前だが、海と空しか見えない。
そこで、近くの超ローカルな売店めぐり。
よく見るとカメグッズが多い。一帯がウミガメの産卵地だから、らしい。

が、あれ?? なんか見おぼえが。

左は、その昔、広西省チワン族自治区の南の海上にある潿洲島で買ったカメ。右が御前崎で買ったカメ。
「よくぞはるばるとお越しで」とはどっちがどっちに言っているのか?
まあ、カメには国も国境もないのですが……。