北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

魔猫に猫ぐるま

先日、近所に住む女の子バオバオ(仮名)が遊びに来た。

幼稚園の卒園式が終わったばかりとのこと。卒業証書を見せてくれたのはいいが、
数日後に小学校の入学試験の面接があるらしい。

中国でも小学校は義務教育なので、北京戸籍のバオバオなら、結果が悪かったからといって近所の小学校に入れないということはないはずだ。だが、試験は試験。やはり気になるのだろう。

そこで、リラックスさせたい、という気持ちもあって、一緒に粘土遊びを始めた。
だが、よくあることだが、つきあっていた私の方が熱中。
バオバオは気がのらないらしく、テレビの方に目をちらちら。

ちょうどやっていたのは、3Dアニメ。粘土人形も3Dといえば3Dだが、やっぱり自分から動く人形の方が刺激的なのだろう。

一方、ひとしきり遊び終えた私は、
「ほら、魔女と魔猫だよ〜。後はよろしく〜」
と、意味不明なシロモノを残して台所へ。

後は、相棒につきあわせ、夕食の準備を始める。しばらくしてバオバオも帰宅。
下ごしらえを終えて部屋に戻ると、
相棒が作品の完成図を見せてくれた。

魔猫のしっぽが抜かれ、代わりにつながれて(突き刺されて)いたのは、荷車!

「ええ、猫車になってる!」とウケまくる私に、
「いや、バオバオは犬に三輪車をつけたつもりらしいぞ」
と相棒。

猫が犬に変わったのは想像力のなせるわざ(?)だとしても、
私は子供って素直だな〜、といたく感じ入ってしまった。

子供の世界も楽じゃない。荷物満載の車をくっつけたのは、やはり心が無意識に何らかの負担を感じているからだろう。
小学校に入ることへの、不安かな?
そういえば、「小学校に入るの楽しみ?」と聞いた時、答えがなかった。

そもそも、中国の小学校は宿題の多さで有名だ。校区の関係から、その子が入るのは北京でも教育レベルの高い学校なので、負担はなおさら大きいはず。

しかも、幼稚園から小学校に入った後の情況の変化は、バオバオ自身も目の当たりにしている。以前、一緒によく遊んでいた近所の子は、一年早く小学校に入ってのち、ほとんど遊んでくれなくなったらしい。

「仲良しの子は、同じ小学校に行くの?」と聞いたら、「一番の仲良しは他の小学校にいっちゃう」とのこと。
となると、よけい不安なんだろうな。

というわけで、
何ができるわけでもないのに、なぜか私までそわそわしてしまう、6月の暑苦しい毎日です。