北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

ダックのハロウィン

出張やら何やらでバタバタしていたら、あっという間にもう月末。
やっぱりグーグルはアメリカンだ。
検索しようとすると、「ハロウィーンを忘れるな」と主張してきたので、
先日フェイスブックにアップした写真を載せて、お茶を濁すことにします。


こちらはそのおしり。

毒グモダック


不気味さにゾクゾク

近くのデパートで展開されていた、派手に場違いのハロウィン商戦の写真。
化け物も迷信もビジネスになればOKの時代とはいえ、なぜにダック?

世界を巡回した、かのラバーダック(2013-10-17 - 北京・胡同逍遥参照)そっくりなのに、足がついている、というところがミソ。
年末には別のデパートに出かけていって、サンタクロースにでもなっていそうです。

正直、最近までずっとハロウィーンはアメリカの風習かと思ってました。でも、ただアメリカが派手に祝うというだけで、もともとはケルト人の風習なんですね。

とはいえ、一部の解説にあるように「欧州由来の風習」と大まかに括るのには、やっぱり抵抗が。
それは、スウェーデン人の友人の話を思い出してしまうから。
「最近はスウェーデンでもハロウィーンを祝い始めたの。今は何でもアメリカ化してるから」と語ってくれた時の口調が、ちょっぴり悔しそうだったのです。
反対にスウェーデン独自の風習は、だんだん影が薄くなっているということなので、よけいやるせないのでしょう。

クリスマスさえまだまだ祝わない人も多い中国で、ハロウィーンの認知度が上がってきたのは、ほんの最近。まだまだ、ハローウィンを表す「万聖節」という言葉に、「何それ?」という顔をする人は多い。
でも、時間の問題なのかもしれません。社会のさまざまな面がアメリカナイズされてきている今、文化的風習だけシャットアウトする、というのは難しいはず。かりにそれが他国では単なる消費文化に堕したとしても。

デジタル化、情報社会化、グローバル化、アメリカの主導でもたらされたさまざまな新しい風潮は、世界のあちこちに相似た精神風土をもたらしているもよう。
でも、そういった風潮がもたらした合理化、効率化、生身の人間の疎外化は、陰に目に見えない、新しい危険もあれこれはらんでいる。
それが、魑魅魍魎が行き交うイメージ、「ちゃんと対策をしないといたずらするぞ」というお化けの脅しに妙なリアリティを与えたとしても、ぜんぜんおかしくない。

でもかといって、中国の人たちが化け物の皮をかぶって、ハロウィーンを祝う日が来るとは、まだちょっと思えない。
やっぱり中国原産の、キャンディなどではとても満足しない、
いたって欲深な怪物が多すぎるからだろうか?