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今日は幸い、ケン・ローチ監督の新作『I, Daniel Blake』を鑑賞することができた。
徹底的に弱者の側に立った『I, Daniel Blake』には深い共感を覚え、
何度も涙腺がゆるんでしまった。
福祉制度はいくら一見立派でも、合理化がもたらすひずみや、「人間性」の欠如や、
為政者の本音や、見えない差別と無縁ではいられず、ゆえに、ゆがみや落とし穴に満ちている。
最初はちょっと差別意識を持っているように見えた主人公が、
実は同情心に満ちた「いい人」で、
しかも「いい人」であるがゆえに、
どんどんと「這いあがれない」状況に陥っていくのが、ぞっとする。
「チャイナ」と呼ばれているアフリカ系の男性のたくましい商魂の描写は、
中国の製造業の不正をかなり直接的に皮肉ったものだったが、
チャンスに恵まれない者の立場を考慮した、良質のユーモアだったせいか、
会場からはくったくのない笑い声が上がっていた。
そして、何ともやるせなく、悲しいのがラスト。
会場全体から拍手が起こったのは、
やっぱりみんな、何か感動を形にせずにはいられなかったからだろう。
次に夜更けの映画館で
『ダヴィンチ・コード』で有名なダン・ブラウン原作の『インフェルノ』を鑑賞。
普通のハリウッド映画という感じではあったが、
テーマは地球人口の膨張やテロの問題に踏み込んでいて野心的だった。
イタリアやトルコの美しい遺跡の風景がわんさか出てくるので、旅心も強くすぐられた。
アクションも派手だったし、実は「007」的路線もめざしているのだろうか?
ちなみに、いずれの作品も何ともいえず「痛々しい」おじさんが主役で、
タイプこそ違えど、けっこう「怖い」。
人生の末路と、世界の末路、やっぱりいずれも楽観はできそうにない。
こういうのを観た後は、一人で夜中12時近くに電気が消されかけた映画館から出てくるのなんて、
怖いうちに入らない。