北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

日照重慶(重慶ブルース)

先回「インサイト・チャイナ」に発表した映画評です。
映画の原語タイトルにある日照は山東省にある地名です。地名が組み合わさって、太陽が重慶を照らす、という意味にもとれるタイトルになっているわけですが、日本語ではその妙味が翻訳不可能なのが残念です。

http://www.insightchina.jp/newscns/?p=8472

この映画、実は気になる点もいくつかあります。例えば主人公の男の2人目の奥さんが明らかに1人目より若くてきれいだとか、重慶が主な舞台なのに、登場人物の一部があまりに北京人っぽい言葉をしゃべっているとか。

でも、言いたいことの深さは十分ディテールから伝わってきますし、さらに大きな目で見れば、「十七歳的単車」「青紅」を含めた三部作を通じて、北京‐地方(出身者)、雲南‐上海、重慶‐山東を舞台に、中国の大都市の住民やその農村との関係などを、点から面を感じさせる形で描こうとした、監督のダイナミックな構想とその効果には、感心するばかりです。