北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

面白公安ポスター

 公益コマーシャルとか宣伝ポスターとかって、うるさいなあ、と思ってしまうことも多いふまじめ者の私。でもこういうのってやっぱり社会を映している鏡だなあ、と思う。最近見たのは、医者や警察などにお世話になった人がお礼に金品を渡すことを戒めるCM。3人に2人の医者が患者からお礼を受け取ったことがあるっていう統計もあるぐらい。やっぱりまだまだ中国社会は物でつながってる部分も大きいんですね。

 そんななか、へんな「公安ポスター」を見つけた。最近増えた電話を使った巧妙な詐欺事件に気をつけましょう、という内容のもの。この手の詐欺は、多額の電話料金が未払いです、誰かがあなたのパスポートを使って口座を設けました、などといった口実で巧みに被害者の金を騙し取ろうとする。

 でもポスターはそんな深刻な問題を扱っているとは思えないほど軽いタッチ。映画に出てきた小道具あり、お笑い芸人も登場し、で何だか笑ってしまった。日本の警察ってこんなポスター作らないよね。

 ちなみに、上の図の左下にでてくるのは2008年のお正月映画「非誠勿誠」に出てきたブラック・ユーモアを感じさせる発明品「分岐終端機」をもじった「争端解決器」。これをつかえば、世の中のどんな問題も公正なじゃんけんで解決できる、というもの。電話で話しているのも、映画の中でこの発明品の知的財産権を買い取った大富豪役を演じた范偉。電話で言っているのは「だまそうったってそうはいかんぞ」って感じのセリフ。

 下の図に出てくるのは、人気お笑いタレントの小瀋陽。吐いているセリフも人気漫才からの引用で、東北弁で「金は足りてるよ(ここでは「支払いは滞ってないよ」)」の意味。

 しかし今日も、国産アイスクリームの有名な商品の偽物を作って売ったとして、3年の実刑判決が言い渡された人の話が新聞に出ていたばかり。国産アイスにまで偽物が?と笑ってしまったけれども、このポスターの知的財産権とか肖像権って大丈夫なんだろうか?パロディだし、利潤目的じゃないからOKなのかな。