北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

映画『趙氏孤児』について

ご紹介が遅れましたが、先回投稿した映画評です。

http://www.insightchina.jp/newscns/?p=12208

このサイトでははっきりとは書かなかったけれど、この映画、私は結末が納得できませんでした。血縁や肉親がいくら大事だといっても、自分が生まれるか生まれないかの頃の仇を返すために目の前の、しかも子供のころから親しんだ人を殺す、なんてこと、今の私たちには納得できない。むしろ、子供が仇を返せず、屠岸賈も情が移った子供を殺せず、結局程嬰の苦労が水の泡に帰す方が、自然に感じたでしょう。

戯曲の名作を映画で蘇らせようとした監督の野心には感心するのですが、本当の意味で現代人の心を打つには、批判を恐れず、時に大胆にメスを入れる勇気が必要なのかもしれません。無難さを狙うだけでは、映画を作る意味がない。

映画はある意味で鏡ですね。どんなに作り込まれた映画でも今の人々の心や社会と響き合うもの、呼応しあうものがなければ、存在している意味が薄れてしまう。逆に、どんなにふざけたお笑い映画でも、社会や人とつながっていれば、はっと心を掴まれる。

最近、馮小剛監督の名作で中国お正月映画の開祖となった『甲方乙方』を観直して、その感を深めました。こちらの評も、毎月書いている「スーパーシティ上海」の2月号の映画欄に書きましたが、あいにくまだ掲載前&紙媒体のためここでご紹介できず、すみません。