北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

中軸路をめぐる思惑

春節明け早々に「大拆大遷(都市めった斬り)」の話をアップするのも何なので、先回の記事の答えになるものを先にアップします。「集広舎」のHPのコラムです。
http://www.shukousha.com/column/tada/beijing027.html

ずっと書きたくて書きたくて仕方がなかった内容だったので、簡単ながらまとめられてほっとしました。本当は関係者にインタビューをしたいくらいだったのですが、誰を探せばいいのか分からなかった。地元の住民には、「取り壊しの補償金に期待」派も確かにいるかとは思いますが、私の知っている範囲では、「立ち退きたくない」派も確実に何人かいます。

鼓楼と鐘楼(合わせて鐘鼓楼)は、そこに私にとっての「重力の中心」があるのではないか、と思うくらい、魅かれる場所です。実際、ここ3回の引っ越しで、住まいも「鐘鼓楼」の北、西、南西と逆時計回りで動いており、今私の住んでいる胡同も、「社区」と呼ばれるコミュニティーの分類法では「後鼓楼苑」というエリアに属しています。

正直、北京ではすでにめずらしいほど、昔ながらの胡同が比較的良く残っているエリアで、特に鐘楼の周辺を鳩が飛ぶ風景はとても味わいがあります。そんな場所の景観が一変してしまったら、哀しいどころかショックで寝込んでしまうかもしれません。

ちなみにこの鐘楼と鼓楼の間の広場は私が勝手に「北京のタイムズスクエア」と呼んでいる場所。なぜなら、春節前の大みそかになると、除夜の鐘が響きわたり、爆竹や花火の大合戦が行われるからです。大勢の人が集まり、テレビ中継などもよく行われます。

でもどうやら、今年の除夜の鐘は、嬉しさと不安の入り混じった複雑な気持ちで聞くことになりそうです。