北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

駆け足下町めぐり

地震をめぐっていろいろと考えたこと、はまたこの次にして、今回はこの前の東京での新発見について。

宿はいつも下町を選ぶのですが、今回は相棒もいたので、木場の安いツインを予約。時期が時期だったのと、場所が液状化現象の起きた所に近かったためか、ホテルはガラガラ。でも大浴場が空いていたので、楽でした。

先回行った台東区の上野にある「下町風俗資料館」がとても面白かったので、味をしめて今回は「深川江戸資料館」というところへ。ちょうど午前中にぽっかり2時間空いたからです。

ここがまた結構面白かった。映画村のように、江戸時代の様子が実物大で再現されているのだけれど、商店や船宿などとともに長屋も再現してあって、ここはどんな人がどんな家族と住んでいた家、とか、きちんと細かく住人のディテールが設定してある。若くて独身者なので、まだ畳が買えなくて、むしろの上に寝ているシジミ売りの男とか、子供が二人いるのに部屋は狭いから夏はふとんを質に入れ、秋に請け出している家、とか。

ちなみに、魚の油をしぼっている家は、私と同じ名字の家だった。そう多くない名字なのに……。しかし、「油をしぼる」家なんて何て殺生な・・・。

家はそれぞれ中にはいって、その家の人の気分になることもできる。はっと気がつくと、相棒が魚を釣った後に家で一杯やっているおじちゃんのふりをしていたので、私は三味線のお師匠さんの気分で、唄の練習のふりをしてみた。その後火鉢を囲んで、お茶を一杯。(もちろんお茶は出て来ないけど)

それで思ったのは、やっぱり下町の生活って、胡同の大雑院の生活に結構似てるな、ということ。江戸と言わず昭和の写真を見ても、東京の下町の生活を写した写真に、あ、胡同だ、と思うことがある。もちろん、表札をかける習慣とか、大雨対策とか、違う所もたくさんあるのだけれど。

唯一残念だったのは、「下町風俗資料館」と違って、「深川江戸資料館」の方はおもちゃがないこと。「下町」の方ではベーゴマとか日光写真のセットとか買えて面白かったのにな〜、と思っていたら、門を出た所でこんなおじさんを発見。手にしているのはかの南京玉すだれ。興味のある人には教えてあげているらしい。ちなみに「南京玉すだれ」って「南京」とつくので、南京が発祥かと思っていたら、もとは富山のもので、「南京無双玉簾」(南京にもないめずらしい玉すだれ)がだんだん省略されて広まったんですね。

私も試してみたかったけど、何せタイムリミットは2時間。この楽しいおじさんとももっとお話したかったけれど、東京での時間は金どころかダイヤ、ということで泣く泣く諦めました。東京にお住まいの方はいつかぜひ!