北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

海の向こうのかなしいお話

スウェーデン人の友達が海を越えて北京に遊びにきた。
その話で印象的だったものがいくつか。

スウェーデン人は英語文化の波をひたすらかぶり続けているのだとか。
英語の喋れないおばあさんが、ひまつぶしに面白いテレビを観たくても、どれも英語チャンネルばかり。しかたないので、ずっと幼児番組を観ている。幼児番組はスウェーデン語だから。
「100年後は私たちみんな英語をしゃべってるかも」と友人。

スウェーデンの多くの都市では、1960年代に古い町並みをかなり壊してしまった。その後の街並みの変化は少ないけれど、「なぜ当時もっと残しておかなかったのか」と残念がっている人は多い。

バルカン半島からきた移民への差別が激しい。顔も言葉もスウェーデン人と変わらないのに、両親が移民で名前がユーゴスラビア系のため、住むアパートが見つからない友人がいた。その友人は仕方なく名前をスウェーデン系に変えた。

などなど。世の中に楽園なんて存在しない、と分かってはいても、やっぱりかなしい。