北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

母をたずねて三千里

長らく日記をお休みしてしまいました。今も過労死が怖くなるほどの忙しさ。でも、ちょっと近況報告します。

実は先日まで、仕事の合間を縫って帰国していました。

主には母の体調が悪いための帰国でしたが、お盆の頃でもあり、いつも使う航空会社のチケットは値段が2倍以上に。

そこで、それまで話には聞いていても手を出すことはなかった春秋航空にチャレンジ。破格の安さなのですが、上海‐茨城間の朝9時台の便です。

そこで、まず上海行きの列車の予約のために窓口へ。ところが夜行の硬座、しかも上海にはフライトの一日前の早朝に到着する列車しかないとのこと。

で、いざ乗り込むと6人掛けの真ん中。しかも周りはすべて体の大きな若いお兄さん。そこで恥ずかしがるほどの若さでもありませんが、何せ足が伸ばせない。何とも窮屈な姿勢で久々の上海へ。

一日上海の現代アートの空間を歩き回り、というか歩き回れない足なのですが、何とか歩き、晩は浦東空港へ。そう、空港のベンチで夜を明かすためです・・・。

一応24時間開いているはずなのですが、晩はガラガラ。売店の女の子が「明け方は寒くなるよ〜」と心配してくれました。実際はそれほどでもなかったのですが、ほとんど人のいなくなったロビーで、天から棒が降ってくるような天井のデザインを「逆針山だ」と恨みつつ、半野宿。

何とか朝を迎え、さあ、一番乗りだ、と張り切っていたら、春秋航空の前の受付ロビーは一面の人、人、人。どうもここ2日ほど飛行機がまったく飛ばなかったため、搭乗待ちの乗客がわんさか押し掛けたらしいのです。列もどこに並べばいいのかまったくわからなくなり、極度の混乱状態へ。警官もかけつけていました。

何とかその中をかき分けて飛行機に乗り込み、茨城空港へ到着。ここからは何と500円でリムジンバスが東京駅まで走っているのです。でも予約は満員。順番待ちで臨時の便に乗り込めたけれど、けっこうぎりぎりセーフ・・・。

東京駅では、日本橋口からぐるりと八重洲口に回って、夜行バス乗り場へ。時間があったので、途中の喫茶店で仕事をしましたが、義足のような矯正器具を外して乾かさせてもらったため、周囲の眼はちょっと「不思議な人」扱い。店員さん、親切なサービスありがとうございました!

その後は夜行バスと鈍行列車を乗り継いで、翌朝無事実家に到着。
もちろん、母を尋ねあてたマルコに負けず達成感ばっちり。

帰りもほぼ同じルートでしたが、東京で仕事をしたり、知人に会ったり、横浜や上海で洋館めぐりをしたりできたので、行きにまけず充実していました。ただ、空港泊はなく、久々に外灘近くでドミトリーを体験。同室の子は北京の大学生で、しかも帰りの列車も一緒だったので、お友達に。
この他にも、道中いろんな楽しい方に出会えました。

で、つくづく実感。ほんと、いいですね、旅って。
今回は実家に帰るという目的があったので、限度がありましたが、
やっぱり「旅」をするなら「足」は遅ければ遅いほどいい。

今はさすがにちょっと懲りていますが、またつい買ってしまいそうです、上海ー茨城便。