北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

胡同一号の七不思議

締め切りをすでにすぎてしまった二つの重要なお仕事の編集者の方から、それぞれ「五月雨式でもいいから原稿を!」と言われているので、日記なんか書いていちゃいけないのだが、ちょっと息抜きに「五月雨式」日記を。

私の住んでいるのは某胡同一号。子供の頃ウルトラマン好きだったいとこが「胡同一号だなんて!」とうらやましがってくれたが、別に二号、三号と一緒に正義のために戦っているのではなく、単に一番地だということ。

この「胡同一号」の敷地には60世帯ほどが肩を寄せているのだが、その塀の中で、実はいくつもの怪奇現象が私によって発見されている。怪談には季節遅れだが、今回はその内の2つをご紹介。

その一 葡萄の怪
ある家は、誰も住んでおらず、庭への格子門も鍵がかけられているのに、毎年その庭にはブドウが実り、すべて収穫されていく。

その二 カミナリ発電のランプ
ある日、ずっと壊れたままだった共同トイレのランプが灯っていることに気付いた。30年ここに住んでいる住民に誰がつけたのか尋ねると、雷がピカリと光った日に突然ぱっと灯り、どこから電源が来ているのかもわからないのだとか。「それまでの30年間ランプはずっと消えたままだった」と。だがその日以来、トイレのランプは昼も夜もずっと灯りつづけている。

ほら、怖いでしょう??