北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

艾未未の「木」と映画二つ(「到阜陽六百里」、「語路」)

これは半分仕事なのですが、
先日も楽しく展覧会めぐり。
車もブンブンとばしている京密路を電動バイクでぶいーんと駆け抜け、
一時間弱で芸術区へ。

3月の北京はまだけっこう寒く、体を固定させたまま走ると、ちょっとほぐすのが大変。

しかも、その日は「残念賞」が目立ちました。

欧米系画廊の「本店」での展覧会を北京のそれと間違えてしまい、行ったら何もやってなかったり、
面白そうだぞ、と思って楽しみにしていたら、計画が変更になったのか、なぜか開いていなかったり、
開いているのに「ビデオ撮影中」とかで入れてもらえなかったり、
「記事にできる!」と思っていた展覧会が、実は日本でも開かれていたことが分かったり……

でも、すでに閉店時間になっていても、開けて展覧を見せてくれた画廊もあったりして、やはり心温まる出会いはありました。

とくに、とっぷり日が暮れた後に駆け込んだ麦勒画廊で見た艾未未の作品、枯れた木を接ぎ合わせて大きな木を形作った「Tree No.6」はよかった!
コンセプトの面白さと思想性、形の美が一体になっている、と思いました。

どんなに無駄足が多くなっても、一つすばらしい作品に出会えると、すべて報われるのが展覧会めぐり。
とうわけで、懲りずにまた出かけることでしょう。晩、腹ペコになって駆け込もうとした行きつけの食堂がなぜか消失していた、というおまけがついたとしても。

そう、北京は「一切無常」なのです。

最後に、個人的な都合で休載になってしまった映画コラム、最後の二回分をはりつけておきます。

http://www.insightchina.jp/newscns/2011/10/10/43423/
http://www.insightchina.jp/newscns/2011/10/26/45866/

「到阜陽六百里」と「語路」、いずれも「今の中国にいてよかった!」と思えるすばらしい作品でした。とくに「到阜陽六百里」はさすがのロングヒットで、今でも百老匯電影中心で観られるようです。まだの方はぜひ!

「語路」の企画をしたジャ・ジャンクー監督も現在、北京で第二のアート系映画館の設立を目指しているそうで、映画ファンとしては心から楽しみです。