北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

ダ・ヴィンチで藤井フミヤさんが推薦!

私のきわめて地味?な人生の中では、そうたびたびは起こらないびっくりです。

これまでいろいろな方に支えられてきましたが、まさかこの方にまで支えていただけるとは!!

なんと
8月号の雑誌『ダ・ヴィンチ』で、あの超有名ミュージシャンの藤井フミヤさんが、拙訳の『乾隆帝の幻玉』を推薦してくださったのです!

老北京の玉職人の世界と藤井フミヤさん……正直なところ、最初はまったく結びつきませんでした。
でも、文章を読んでみて、なるほど、と納得。実は藤井さんはかなり幅広く読書をされる方で、しかも昔上海の骨董店で玉をご覧になったことがあるのだとか。

今回いただいた紹介のお言葉、どれもありがたかったですが、なかでも

「物語自体も面白いけど、何より中国の文化が感じられるのがいいんですよね。特に茶店での商人たちの会話を読んでいると、当時の生活の匂いが漂ってきて、別世界に連れて行ってもらえる感じがするんです。」

というくだり、ほんとうに訳者冥利につき、嬉しかったです。言葉にとことんこだわった歌詞を多数てがけ、印象的な曲をいくつも発表する一方で、アーティストとしてのセンスにもあふれ、さらにファッション・リーダー的な存在としても活躍し続けている藤井さんの言葉ですから、感激はひとしおです。

実は、チェッカーズがデビューし、一世を風靡していた時代、私は実家の事情でデトロイトに住んでいました。当時、日本の情報はほんとうに限られていて、テレビなどはもちろん見られず、雑誌さえ貴重で、たまに手に入ると、何度も読み返していたのを思い出します。

そんななかに、チェッカーズのヒット曲について紹介しているものがありました。でも歌詞は書いてあっても、メロディーが分からず、「どんな歌なんだろう、印象的な歌詞だから、メロディーも聴いてみたいな」と思いながら過ごしたのを今でも鮮明に覚えています。

つまり、最初に藤井さんの存在を知ったのも歌詞の「言葉」を通じてで、今回藤井さんに拙訳を通じて楽しんでいただけたのも小説の「言葉」だったわけです。

おこがましいようですが、やっぱり縁とは不思議なものだと思わずにはいられません。

これを機に、藤井さんの言葉の世界、再体験してみたいと思います。
まずはニューアルバム『Life is Beautiful』をゲット!
その意味でも次の帰国は楽しみです。