北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

燕京号休航!

まさか、とびっくりしました。

実は、次回の帰国は船で、と心に決めていました。べつに空港の松葉杖チェックが怖いからではなく、船旅の面白さをもう一度味わったり、大阪で学生時代の友人に会ったりして、いろいろと気分を入れ替えたいと思ったからです。

が、

学生時代にバックパッカーとして乗って以来、長らく乗船の機会がなかった燕京号、3泊4日で神戸と天津を結ぶ、いまどき珍しいほど「超のんびり旅」が味わえる夢の船が、今月の7月2日神戸発の便を最後に、長期休航してしまったことに今日気付きました。

恐らくかなり急な決定だと思います。なぜなら、先月下旬にチケットを予約しようと電話した時、「まだ夏季の運賃表が確定していないから、予約は7月中旬以降にして」と言われたからです。

それにしても、もったいないし、あっけない。

いつ再開できるかわからない、再開自体、できるかどうかもわからないのなら、もう少し宣伝してもよかったでしょう。「ぜひ何とか運航を続けて!」とファン(いると思う、たぶん)がラブコールを送ったかもしれません。最終的に休航は免れなくても、これまでの燕京号の功績が何かの形で取り上げられたかもしれません。

1990年にスタートした燕京号は、この22年余の間に、多くの人の夢やあこがれを載せ、多くの交流を生んできたはず。

貧乏学生時代、新、旧鑑真号、蘇州号、燕京号といろいろな日中間のフェリーに乗りました。

ある時、日本に帰る便に乗ったら、多くの中国人研修生が日本に行ける嬉しさではしゃぎまくっていたのを思い出します。そんなに甘くないのでは、と心中複雑でしたが、そんな彼女たちと雑魚寝の二等船室で寝起きを共にし、いろいろとおしゃべりできたのは、今思えば貴重でした。

生まれて初めて台湾のおじさんに腐乳(豆腐を発酵させた、独特の味がする食べ物)を食べさせてもらい、その後やみつきになったのもフェリーの中でした。

船の中で偶然、大学の同級生に会い、話し込んでしまったり、一週間に一度しか便が無いので、行きで知り合った人と帰りも同じ便になり、急に親しみが増していろいろとおしゃべりしたり、といったこともありました。

もちろん、船酔いでとんでもなく苦しんだり、吐き気がひどくて無料の朝食でさえ食べられなかったり、といったことはありましたが……

船の中を飛び交う中国語や、船の服務員の中国的サービスと接することが、来る中国旅行へのいいウォームアップになったのも覚えています。

まだ鑑真号や蘇州号に乗るチャンスはありますが、上海発なので、スケジュールに組み込むのはなかなか難しい。

でも、船旅の面白さを思い出していたら、何だかむしょうに乗りたくなってきました。

鑑真号再チャレンジ……やってみようかな??