北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

初盆出張旅行記 その4

さて、地面が動かないのはやっぱりありがたい、と思いながら、終点、神戸港で船を降りた私たち。さすが日中フェリーの船着き場。イミグレーションの職員さんはみな中国からの乗客に慣れていて、東京の空港でありがちな、アジア系外国人に対する冷たい態度は目立ちません。

しかし、やはり私たちにはどうしても彼らの疑いを逃れられない要素がありました。
緊張しながら、順番を待ちます。

「どこから来たの?」
「北京です」
「で、これからどこに行くの?」
「東京です」
「新幹線で?」
「いや、在来線で」
「ええっ、じゃあ何でこの船に乗ったの??」
「燕京号に乗るつもりだったんですが、休航になってしまったんです。でも、フェリーが好きなので、だったら昔乗った鑑真号にまた乗ってみたい、という気持ちがどうしても抑えられなくて……」

かなり感情を込めて「鑑真号への愛」を告白したつもりでしたが、
この時点で、かなり怪しい人間だと疑われてもしょうがない、と覚悟はしました。
でも、意外にも職員さんは極めて友好的なほほえみを浮かべたままです。

そして、その笑顔のまま、私たちの荷物の中身をかなり入念にチェック。

さすがプロ!と感心します。

といっても、私たちはいたって人畜無害な人間ですが……。

そんなこんなでいよいよ神戸へ。神戸には興味津津でしたが、その日のうちに東京に行かねばならなかったので、残念ながら神戸も大阪もその他東海道のもろもろの駅も飛び越え、ひたすら東へ。さらに東京では、駆けられない駆け足で、三日間強におよぶ超過密スケジュールを終え、やっと法事のため、実家へ帰りました。

時差を埋めるため、思いっきりじゃんじゃんはしょりますが、さらにまたそこから移動し、
日本での最後の目玉、大阪へ。今回の日本滞在では唯一となる、つかの間の「観光」を楽しむためです。
ここはほんとにすごかった!
さてその行先とは……(次回に続く)