北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

動物王国とミックスジュース

私は動物王国にいた。

その王国では、私はとても弱い生き物とみなされていたため、
王国で絶対的な力をもつ何者かから、

「とにかくミックス・フルーツジュースを浴びるほど飲みなさい。フルーツジュースの海で泳ぐんだ」。

と指示されていた。そうすれば、自然と同化できるので、敵に狙われなくなるのだと。
それで、私は必死にミックス・フルーツジュースを飲んでいた。

その時、軽やかな電子音楽が流れてきた。
遠い記憶を呼び覚ますような音楽だ。

だがその時、頭の中に絶対者の声が響いた。
「そんなものに近付いてはいけない。お前が人間だということがばれて、危ない」

そこで私はぐっとこらえた。
じっと、息をひそめて、草の中に隠れていた
だが、音は大きくなるばかり……


すると、ポンポンと、体を突く者がいる。

「ほら、電話」。


目を凝らすと、相棒が急かすように
携帯電話を差し出していた。

何だったんだ?この夢は。