北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

北京でクヴァス


あまり知られてないかもしれないが、北京とロシアは地理的に近いだけではない。
母親がロシア人という、ドイツ人の友人が、北京の地下鉄を見て、モスクワとそっくりだと言っていた。

中ソ蜜月時代の名残で、今でもロシア大使館だけは市の中心を囲む二環路内にあるし、しかも、市の中心にかなり近い場所にロシア人街がある。基本的には問屋街だが、ロシアンレストランなどもあって、結構面白い。私の家も、このロシア人街からそう遠くないせいか、よく近くでロシア人を見かける。

最近は分からないが、以前はあちこちでロシアンなパンも売られていた。
ロシア語でパンを意味する言葉の音訳ということで名前は「列巴」(リエバ)。

そんななか、先日おっと思ったのは、ロシアの大衆的な清涼飲料、クヴァスのペットボトル入りが売られていたこと。産地はさすがの黒竜江。

ロシア文学ファンなら、クヴァスという名称はきっと目にしたことがあるはず。その一人でありながら、これまで飲んだことがなかった私は、喜び勇んで賞味。

すみません、というわけで、写真撮る前に飲んでしまいました。

黄色い透明な液体は、一見ビールのようだけれど、飲んでみると、意外と甘く、
一言で言えば、「飲むパン」。
ライ麦と水をイースト発酵させた飲み物だとされているから、パンっぽいのは当たり前かもしれない。

ちなみに購入場所は、セブンイレブン。
セブンイレブンの最近の北京での繁殖ぶりは、ちょっと怖いくらいで、叩かれないか心配になるくらいだったけど、セブンイレブンの「異国の文化を気軽に楽しもう」というコンセプトはやっぱり面白いし、中国に住む外国人には貴重な癒しだ。今回クヴァスを買った近所の東四の店ではウクライナやフィンランドのウォッカなんてものも見つけてしまった。

ちなみに、日本ではチャイナリスクが騒がれているようですが、東四(ドンスー)のセブンイレブンではキティちゃんグッズもちゃんと売られてました。

脱線ついでに言えば、このセブンイレブンの近くには、寿司屋、「朋友の居酒屋」「名古屋理髪店」もありますが、別に襲撃を受けた様子はありません。もっとも、後の二つはどう見ても中国人が開いているお店のようですが。

そんなわけで、他は知りませんが、東四は平和です。