北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

「伝統空間の再利用をめぐる議論」の後半

お陰さまで、貴州、雲南への「大半を寝台列車で過ごす」出張から戻ってきました。
そちらの報告は今度ゆっくり、ということにして、
まずは遅くなりましたが、前回「集広舎」のウェブサイトに投稿した原稿の後半部分がアップされたのでご報告します。

http://www.shukousha.com/column/tada/1845/

また、NHKのラジオ中国語講座のテキスト「まいにち中国語」12月号に、先回、浙江省で取材した竹細工の里に関する記事も掲載されました。

ちなみに、きりがないので集広舎のコラムでははしょりましたが、
商業利用されている文化財のうち、恣意的な改造が批判の的になったものの一つは、前門近くで某著名芸能人が経営している「劉老根大舞台」、つまり元「陽平会館」です。商業利用すれば文化財が多くの人の目に触れるのは確か。それに会館はもともと、多くの人に娯楽を提供する用途を兼ねていたわけですから、陽平会館の娯楽施設化は、そんなに非難されるべきではないのですが、やはり商業行為には利益優先という価値観がつきまとうので、要注意です。

古い建物をどう動かしたら破壊で、どう動かしたら保護なのか、そもそもどんな建物なら、保護すべきなのか、これは人ごとに感覚も理想も異なり、難しい問題です。

我が家に家具を届けてくれたお兄さんが前、「ここみたいな平屋地区なんて、ちょっとだけサンプルで残して、あとはぜんぶ壊しちゃったらいいんだよ」と、同意を求めるように言ってきたので、苦笑したことがありました。

私は元四合院に多世帯が雑居する「大雑院」も一種の面白い文化だと思っているのですが、多くの人は、これをただ情けないだけの状態だと思っているようです。ある荷物運びのお兄さんに言わせると、我が家など「ネズミの巣」なのだとか。

私自身は、エコで老人にも子供にも優しくて、十分「未来型」の家だと思ってるんですが、これはやっぱり他の人にはただの強がりにしか聞こえないのかもしれません。