北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

愉快で楽しいおしゃべり列車

まだネットの上の情報も、読んでいて不安になる内容が多く、平和を愛する者としては、ここらへんで一つハトに関する話題でも書きたいところですが、あいにく最近お目にかかれたのはカモメさんだけ。でも、とってもかわいいカモメなので、ぜひ写真を、と思ったところ、アップできません。やはりネットの世界は鳥も飛べない乱気流で、平和からは程遠いようです。

でも、心和む話題はまだまだあります。

今回の雲南・貴州出張ですが、最初から二重丸をつけたいくらいの「ラッキー」でした。

行きの二等寝台で、私が日本人だと知っても、変わらず親切にしてくれる、とてもいい乗務員と出会ったのです。また、同じコンパートメントの上の段に寝ていた東北出身の女の子も、とても優しい子でした。

私が寝台で一番困るのは、車両の端にある給湯用タンクに熱湯を汲みに行けないこと。それに気付いた二人は、何と、頼んだわけでもないのに、代わる代わる私のカップにお湯を汲んできてくれました。

おしゃべりしている内に知ったのですが、東北出身の女の子は、吉林の出で、今は天津で働いているものの、若いうちに大理でひと頑張りしてみようかな、という野心から、まずは大理への出張を引きうけたそう。

面白い子だなあ、と思うとそこで話ははずみ、お互いの仕事の話、東北の名産、天津の街のこと、日本の美味しい物、各地の方言の差、果ては車窓外の風景に至るまで、話題はつきませんでした。長い長い列車の旅を、時世の厳しさや仕事(!?)も忘れてしゃべり通すこと、4、5時間。

寝台列車上での人の付き合いが、日本ほどとはいかないまでも、以前に比べればだいぶあっさりとしてきたな、と思う今日この頃、日中のいざこざがない時期であっても、ここまで車内で初めて出会った人と話し込むことは稀です。

中国にだってこの子のように、人を国別の分類だけで分けない、人は「何国人」である前に「人」だということを知っている素朴で好奇心旺盛で心優しく理性的な人がたくさんいるわけですが、
これを多くの人に伝えようとすると、これがなかなか難しい。

でも、無力感に脱力……などしてられません。

乱気流でも、がんばって飛んでれば、かえって翼は鍛えられるはず。

でも、その前にまず治りかけてる風邪を完全に克服せねば。
今年の風邪はオールマイティ。熱、せき、喉や体の節々の痛み、悪寒、頭痛、胃腸の不具合、下痢、めまい、何でもござれです。まるで風邪の菌が持ち技を一つ一つ確認しながら、「俺ってこんなにすごいんだぜ」と自己陶酔しているかのよう。

というわけで、皆さん、くれぐれもお気をつけください!