北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

猫猫坂に猫猫小路 at 貴陽

うちの大雑院には、オリンピックの時も淘汰されなかったらしい、たくましい猫たちが3匹ほど住んでいる。家に帰るとき、住民には会わなくても、猫にはたいてい会うと言っていいほど。

最近はうちの屋根の上が彼らの主要通路となっているらしく、頭の上でやたらと走り回る音が。。

勝手に串門(近所訪問)に来る、北京っ子猫もいて、台所に入ったら猫がいた、なんてことも。ドアを開けっぱなしにしとく私たちも悪いんだけど。

外に出るとき、通路の真ん中に魚の頭だけが落ちていたりするんで、魚を買って帰った日などは、ちょっとドキドキ。幸いかっぱらうほど品の悪い猫ではないので、親しげに近づいてくる猫を前に、

「誘惑しちゃってごめんね〜。でも私んちのだからね」

と挨拶しながら「釘をさす」ことにしている。

そんなななか、今日、一日だけ貴陽に滞在した時に撮った写真を整理していたら、こんな写真が。

私たちが泊まった宿は急な坂の上にあったのだけれど、これは、その坂の下にあったスーパー。
この猫猫坡(マオマオプオ)とは、つまり猫猫坂ってことだけど、これはスーパー名でなくて地名。

かわいい地名だな、と思って調べてみたら、どうも貴陽には「猫猫巷」、つまり「猫猫小路」もあるらしい。

言ってみれば、我が家の周りも猫猫巷だけど、そういえば猫って身近な動物なのに、これまで地名で見た記憶はない。

貴陽と猫の関係、ちょっと気になる……。


と書いたところで、調べてみたら、あったあった。

貴州省 猫場 猫跳河 猫洞郷 猫営
雲南省 猫街 猫頭山
広西チワン族自治区 猫児山 猫岩洞
湖北省 猫坪
四川省 猫児坨
浙江省 猫頭洋
河北省 猫峪

でも圧倒的に南が多い。特に西南地区。地名に出てくる「猫」は多くの場合、「虎」の代用とのことだけど、なぜ代用しなきゃならなかったのかはやっぱり不明。その昔、どこかの国に征服された土地の人々が、私たちは虎なんかではなくて、猫のようにおとなしんですって主張しようとしたのかな?