北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

味噌汁の具

同じ海外に住んでいる人でも、夫婦ともに日本人だとこういうことはないのかもしれないが、
我が家のように国際結婚だと、どうしても日々の食卓から日本食がフェイドアウト。

それでも滞在が数年なら構わないが、うちのように十年を超えると、努力して日本食を作るぐらいにしないと、実家に帰った時に勘が狂って苦労する。ただでさえ、食材の種類とか、しょうゆの塩辛さとか、日中の料理事情はディテールがあれこれ違うのだから。

そこで最近、意識的に味噌汁を作るようにしている。納豆なども最近は手に入るようになったので、二つが揃えばちょっと日本風の食卓に。
もちろん、日本の味噌など、近くでは売っていないので、炸醤麺などに用いる北京風八丁みそを使う。だから、晩でも夜中でも「あさげ」。

最初は味噌汁のしょっぱさが苦手だった夫も、最近は理解してくれるようになった。

しめしめ、とだしをつくる私。だが今日、

野菜入れを探っていた夫が一言。
「辣椒も入れたら??」
手にはピーマンのように大きな青唐辛子。

一瞬返答に困る。カミナリ汁だって赤トウガラシだもんな。
うーん、カルチャーギャップは思わぬ時に訪れる。

そういえば、昔京都で中国からの留学生の家に泊まりに行った時、

「私、味噌汁つくれるんだよ!」
と得意げによそってくれた味噌汁の中に、にんじんが入っていた。

ちょっとびっくり。

でも、トン汁ならいいんだから、別におかしくはないんだよな、と思い直す。
常識を破らなきゃ料理だって進化しないはず。

というわけで、我が家のみそ汁も進化するかもしれません。

あ、そういえばこの間、きくらげ入れたらけっこうおいしかったですよ。