北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

「私のかわいそうなマラート」

明日28日が最終日なので、ざっとですが、友人が監督を務めたお芝居「私のかわいそうなマラート」のご紹介です。

若手の演劇関係者にありがちな「無理な背伸び」がなく、でも青臭くもない。分かりやすい内容なのに、脚本選びや舞台美術、演出にはそれぞれ、かなりのこだわりが感じられる、という、とてもさわやかなお芝居でした。

舞台は戦中、戦後のレニングラード。空襲の中、十代後半の3人の男女が出会う。不安に満ちた毎日の中、微妙な三角関係に陥る三人。やがてそれぞれが夢と愛情を実らせるべく奮闘するが、妥協と失意の中で時だけが去っていく……。

原作は旧ソ連のアフブゾフの作品で、発表当時は大人気を得つつも、退廃的と評価されたらしい。でも、舞台を見る限りでは、退廃どころか、不安な青年時代を経て大人になっていく若者たちの困惑と、その困惑を乗り越えて、夢を見つめ直そうとする若者たちの気概が伝わってくる。まさに、今の若者たちが抱いている迷いや渇望とも通じあうものだろう。

面白かったのは、セットがさまざまなパーツを組み合わせられる、中国の知能パズルのような作りになっていたこと。外国人にとっては、セリフが比較的分かりやすいお芝居なのも魅力的。

というわけで、興味がある方は、ぜひ明日の晩(開演19:45〜)、蓬蒿劇場へ!