北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

仙台の月

12月の帰国では仙台に行った。
ちょうど震災三周年まで三か月という12月11日に、
津波の被害が大きかったことで知られるゆりあげ地区を歩くことができた。

ネットのおかげで、海外にいても、東北の震災についての情報はいろいろと入ってくる。
でも、どんなに事態の深刻さを感じさせる情報でも、どこか断片的で、歯がゆい。
震災の時はちょうど日本にいたので、小さいながら揺れも体験しているのだけれど。

距離の問題だけではない。それだけ影響が大きすぎて全容がつかみにくい地震だったということなのだろう。
今回、仙台に行ったのは、友人が住んでいたからというのも大きいが、それだけでなく、何もかもが机上の空論で終わっている自分に「実感」という重しをつけたかったから。

ほんとうに少し一帯を歩いただけなので、どれだけ何が分かったともいえないけど、
悲しい記憶を丸抱えしている大地を踏みしめたことで、自分の中で情報をつなげる土台ができた気がした。

仙台の街の夜はイルミネーションできれいだった。でも、夜空のどこかからいつも私たちを見守っているのは月。
やっぱり世界ってつながってる。