北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

うやむやになったピーナッツ事件

パンが切れたので、昨晩生まれて初めてロールパンに挑戦。
怪しい物でもないのに、例によって深夜すぎにいそいそと生地の形を整える。鉄板に並べ、ちょっと別の用事をしに部屋を出たのが運のつき。
戻ってくると、パンにピーナッツが突き刺さっていた。しかも縦に三つずつも!

「えぇ〜何よこれ!」
どう考えても相棒の仕業。
相棒は無類のピーナッツ好き。でも、相棒が子供の頃は、食料が配給制だったため、ピーナッツは旧正月くらいにしか食べられない貴重なものだったとのこと。そのため、好きな時に好きなだけ買える今は夢のようらしい。
だからって、ロールパンにまで突きささなくても!
焼いてみると、結局ロールパン自体が失敗し、「これはベーグルだ!」と自己暗示をかければまあまあ食べられるというくらいカタイ物体に。
「でもまあ、ピーナッツの焼け具合はちょうどいいじゃないか」
と得意げな相棒を尻目に、
ピーナッツ事件をめぐる是非の追求もあやふやに終わったのでした。