北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

ネットでパジャマ事件その2

つまり、綿100パーセントどころか、これって、綿使っているの?というような手ざわりの布だったのだ。
返品は可能だったが、上海からの品で送り返すのは面倒だしお金がかかる。そもそも安い品でもあったので、まあ値段相応かも、というわけで諦めることにした。
しかし、嘘の表示はさすがに、放っておくわけにはいかない。

そこで、タオバオのサイトを開き、「受け取り」のボタンを押して料金を支払うと、「高、中、下」に分かれている評価を「中」にした。そして、
「思ったより手ざわりが硬いのが気になるけど、その他は満足」とコメント。
ソフトに書いたのは、自分で成分を調べた訳ではない以上、売り手を責めるのは賢明ではないし、他の消費者に「どうも綿100%は偽物っぽい」と気付いてもらうことの方が大事だと思ったからだ。

しかしその後、売り手から「番号非表示」の電話が直接かかってきて、「評価を高くしてくれたら、5元キャッシュバックする」とのこと。
「ええ、そんな5元いらないよ」と断り、ネットが不便な状況にいるし、今さら変えられない、と告げる。

翌日も同じ電話がかかってきたが、その時はパジャマを水洗いし、「絶対に綿100%じゃない!」と強く確信した後だったので、「評価は絶対に変えない」とさらに強く断る。

その直後だった。嫌がらせが始まったのは。

立て続けに届く、意味不明のショートメッセージとワン切り呼び出し音。少し途絶えたかと思うと、深夜にまた始まる。ワン切りの方はもちろん「番号非表示」だ。
ショートメッセージの方も巧妙で、グルメサイトやお見合いサイトの登録画面に勝手にこちらの携帯番号を入力して登録画面に入り、そのサイトから「登録確認」メールを送らせる、というもの。こうすれば、メッセージを送る料金はサイト持ち。もちろん、送り主もそのサイトとなる。

つまり、こちらに残る確たる証拠は、その嫌がらせが始まった「タイミング」しかない。日本でも、ある就職紹介サイトに登録していた親戚が、「登録を解除したとたん、いきなりとんでもない量のジャンクメールが届くようになった」とぼやくのを聞いたことがある。個人情報を握られる、というのは、想定外のリスクをあれこれ抱えることなのだ。

こりゃ手ごわいぞ、と思ったが、やられるだけではつまらない。そこで、もう一度タオバオのサイトを開き、「評価のやり直し」ボタンをクリックした……。