北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

ネットでパジャマ事件その4

クレーム窓口に、あまり証拠になりそうもない写真と苦情の内容を送って待つこと2日間。、
クレーム受け付け用画面に、売り手のメッセージ
「私たちは買い手と連絡などとってません。いったいどういうことでしょう?」
が表示される。
売り手にタオバオから連絡が行ったからだろう。
予想はしていたけれど、あまりにも分かりやすいしらばっくれように苦笑してしまう。

さらに1日経つと、売り手が時間内に苦情への対応をしなかったことが表示され、さらに3日経つと、「苦情申し立て不成立」との表示が。

まあ、そうかもしれない。ちゃんとした証拠がないのだから、タオバオも強く出られないのだろう、と諦めるも、同時にタオバオから来たもう一つのメッセージに救われる。

「苦情の内容に基づき、その処理を終了しました。【不成立の原因】売り手の行為について、タオバオはすでに売り手に対して警告をしました。ただ目下、売り手の嫌がらせだということを判断できません。【特別通知】同時にタオバオは売り手に対し、タオバオネットでは嫌がらせ行為が禁止されていることを伝え、タオバオの規則を守り、違反があれば認め、なければ一層遵守に努めるよう求めました。【不服申し立ての証拠物件】もし買い手が売り手の嫌がらせの証拠を提供できるのであれば、24時間以内に以下のリンクをコピーし、不服申し立てを行ってください…(後略)…」

こういうメッセージが来ると、さすがにちょっと溜飲は下がる。

しかも証拠がないからといって、こちらの言い分を封じるのではなく、今回、私が商品と売り手に対して下した評価は、悪徳クレーマーのものとして無理やり闇に葬られず、ちゃんと掲載されている。

タオバオが不服申し立て、という意味で使っている言葉は「申訴」、つまり上訴を意味する法廷用語だ。夫は公的機関を相手にしたある裁判をめぐり、本物の法廷に長年この「申訴」を続けているが、時間内にちゃんと処理された試しがなく、重要な証拠も無視され続けている。つまり少なくとも私たちにとって、タオバオは本物の法廷よりしっかりしていることになる。

友人が、タオバオの「評価」制度について、中国でめずらしく民主的メカニズムが機能しているところ、と言っていたが、民主だけでなく、法治も徹底しているのだ。

小さな事件だけれど、今回改めて、民→民はかなりの程度までちゃんと機能している、問題は民→官が機能しないことだ、ということを実感。民→官が機能する時は、たいてい裏がある。

同時に、民主的制度の浸透には時期尚早というお上の論は、やっぱりご都合主義。民間はけっこうちゃんとやってるよ、と思うのであった。
(完)