北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

ユーラ・スーパー&陳澄波の作品展

おととい、1カ月半にわたる缶詰生活を終え、何とか正常な生活に復帰。
禁酒も解禁しようとしたら、何とお気に入りのチーズがカビだらけ。私の住んでいる二環路内はチーズがまともに買えるスーパーがあまりないので、これは結構つらい。
こちら

安徽省産ウォッカ(!)も空だったので、昨日ちょっと不思議なロシアン・コンビニ、ユーラ・スーパー

にて何とか補充。
ちなみに、安徽産ウォッカは、何だかウォッカぶっている白酒のような感じで、やはり味はちょっとロシア産とは違うような気がするのだけれど、名前が一応「ウォッカ」だし、私はどうせあまり量が飲めないし、何より価格がたいへん安いので、まあよしとする。

ユーラ・スーパーではなぜかロシアン・チョコレートの種類がジワジワと充実し始めていた。パンも、北京のロシア料理店でよく出てくる黒パンと白パンの中間のものがあって嬉しかったが、やはり一番好物の硬くて酸っぱい黒パンはないのが残念。

それはそれとして、今日、友人のお勧めで切り絵の展覧会を観に中国美術館に行ったら、切り絵もそれなりによかったのだけれど、同時に台湾作家の陳澄波の展覧会もやっていて、むしろそちらに衝撃を受けた。
http://www.namoc.org/zsjs/zlzx/201403/t20140324_274675.htm
私自身は陳が台湾の風景を描いた絵の、ピンクがかった独特の色遣いと、ちょっとくねった屋根や木々のラインを面白く感じた。とくに田園風景の絵では、久々に絵の前を去りがたくなった。
陳は東京芸術学校に留学していた時期もあるため、会場には東京の風景や、卒業制作で描いた和服の女性などの絵も。やはり時期が時期で、日本関係は何かと冷遇されがちなことだし、何といっても北京のど真ん中にある、中国を代表する美術館でのことなので、これはちょっと嬉しかった。
一瞬、「やっぱり政治は政治、芸術は芸術、だよね」と一瞬ほっとした私。でも陳のプロフィールを読んで、それは甘かったと反省した。国民党系の外省人と本省人が対立した二二八事件の際、国民党側との交渉役になったのが災いし、なんと陳は「処刑」という形で生涯を終えているのだ。
http://chenchengpo.org/?page_id=1323&lang=ja
何て罪の深いことを、と思うと同時に、改めて彼の絵が今、美術館に飾られる意味について考え込んでしまった。