北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

まさに「待っていました」というべき、すばらしい特集です。
http://www.aij.or.jp/jpn/touron/top.html

拙文も注で引用されていて、ありがたいです。

四合院、とくに大雑院の改修に関わるさい、既成のイメージに囚われない、外国人ならではのメリットは大きいと思います。
中国の某著名建築家が日本人建築家について、「小さな空間を上手にデザインするのに長じている」と語ったというのを耳にしたことがありますが、それは私も同感です。
でも、何といっても外国人、中でも日本人が伝統的な居住空間に関わるとなれば、やはり困難はとても大きいはずです。

そんな中、こういう風に自分から胡同の大雑院の空間にコミットしていく建築家がいるのは、とても心強いです。

ちなみに大雑院でも、基本的に公共空間は不動産管理局の許可がないと改造できません。でも、その許容度が、住民や場所によって微妙に違うのが難しい。老北京のおじさんが、家の前の地面のタイルをはがしてカボチャを植えるくらいなら、お目こぼしの範囲だけれど、新しく来た借家人だと、家の前に丸太を置くだけで怒られる、とか(経験者は語る)。

でも、コミットするのはやはり大事。以前、敷地の門の階段が自転車にはあまりに不便なので、小さなスロープをつけたら、クレームがきて、壊されました。私が外国人の借家人と思われていたから、反応が敏感だったのかも、と思います。でも、結果的に、管理局側がスロープを作り直してくれたので、やはり「行動」に出て良かったと思っています。

メンツの問題、お役所の手続きの問題、あと、胡同に住み続けたい、または住み続けざるを得ない人々の、気質や背景の問題……。
関わればこそ見えてくるものってたくさんあるはず。
私も萎縮していてはいけない、と改めて刺激を受けました。