北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

暑いのは苦手だ。

なので、そんなこと言ってもしょうがないのに、
つい「あちーあちー」と言ってしまう。

でも、今日は言ったお陰で、ちょっとだけ涼しくなった。

なぜなら、私が「あちーあちー」と言っていると、
まんねん日本語勉強中の相棒が、丸刈り頭を振りながら部屋に入ってきて、
間髪を入れず、抑揚つきで、

「こちー、そっちー、あちー?」

と、言ったからだ。

もちろん、コソアド言葉の練習なのだが、
中国の人はたいてい、小さな「つ」、つまり促音が苦手。
それが、いい味を出してしまっていて、こっちは大爆笑。

笑うと、ちょっぴり涼しい気分に。
確かに、言葉の勉強中って、「同じ音」に敏感になるもの。

ちなみに私も小学校低学年の頃、バスに乗った時、
「運賃は運賃箱にお入れください」というアナウンスを耳にして、
「ねえ、うんちだって、うんちー!」
と大声で言い、母をどぎまぎさせたそうです。