北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

昆明生まれの水仙のつぶやき

昆明の花市場で買った水仙の球根が北京の我が家で花開いた。
朝起きると、すぐ頭上にある水仙の花の香りで癒される。こういう時は狭い部屋も悪くない
でも、水仙の方はきっと、「あれっ、花の都昆明にいたはずなのに、何でこんなに寒いんだ?お肌もカサカサじゃないか」と思ってることだろう。

そういえば、水仙を買った花市場があった旧市街地も、大規模な取り壊しのがけっぷちにあった。主要な通りの半分が取り壊され、再開発後の完成予定図のポスターでごまかされていた。

古い街並みと市場の活気が素朴で庶民的な味わいを生んでいたあの通りも、今はもうなくなってるのかな?
どんなに新品でこぎれいになっても、人や街の記憶が感じられなければ荒野と同じなのに。
荒野になってから慌てて、花咲かじいさんを呼んでも遅いのに。