北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

謎の現象

昨日、CCTV6で夜9時に林志玲主演の日中合作映画、「スイートハートチョコレート」を流していてびっくりした。

そもそも規制があるため、中国のテレビ局で外国のコンテンツが流れることは少ないが、なかでも、夜の外国語映画枠は最近、どんどんと時間が遅くなっていて、子供向けのアニメ映画でも12時近くに流れていたりする。なので、9時台の放映はかなり早い方だ。

久々に中国の映画チャンネルから兵隊以外がしゃべる日本語を聞いたのも新鮮だったし、何より内容が北海道夕張を舞台にした、上海人留学生と日本人男性とのラブストーリー。

これはもしかして雪解けの前兆?それとも局の担当者が無謀なだけ?と思っていたら、今日流れていたのは同じ日本語の台詞が多い映画でも、「金剛王:死亡救贖 」だった。

こちらは世界征服をたくらむ憎き侵略者、日本のハディス神社(?)のお話。「日本人=悪」、「愛国=善」の模式を受け継ぎつつも、ステレオタイプ化した日本人ばかりが出るでもない不思議な映画だ。しかも、福建の伝統建築、土楼が出てきて、主人公たちは武夷山の高級ウーロン茶を飲む。

ラブストーリーの後で、でもやっぱり日本の軍国主義は悪いよね、と自主的にバランスをとろうとしたのか、それとも上から「日本人を良く描くなどけしからん」とお達しが来たのか。

いずれにせよ、前者は夕張、後者は福建省内陸部という差こそあれ、いずれも映画を通じて地元の魅力を紹介し、あわよくば観光客を呼び込もうという下心が見え見えだったのは、面白かった。

良い意味でも悪い意味でも、今はグローバル化の時代。いくら政治が対立していても、業界ごとの価値観とか手法とか共通言語はどんどん国を超えて共有されるようになっている。日中の各業界がそれぞれ世界の動向に注目し、チャレンジングなことを続けていけば、互いへの理解も深まり、しこりが消える可能性も高まるはずだ、とふと思ったりした。