北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

新聞スタンド消失をめぐる妄想

今は日本に一時帰国中なので実際に目にはしていないのだが、日経のニュースによると、現在北京の新聞スタンドが次々と壊されていて、長安街沿いでは50軒以上が消えたのだという。

関係あるのかどうか分からないが、先回と今回の帰国直前のお話。

昨年末に帰国する時、空港までのリムジンバスのチケットを売る新聞スタンドが、元の場所から移っていることに気づいた。その時は急いでいたので、別の交通手段で空港まで行った。

今回の帰国の時は余裕があったので、新しいチケット売り場を探してみた。元の新聞スタンドの売り子さんに「どこに移ったの?」と聞くと、「良く分からない。どうも東の方みたいだけど」と言う。それじゃあどれくらい遠いのかもわからないので、もう少し確実な情報をと思い、別の人に聞いてみると、東ではなく西隣りで、しかも目と鼻の先だった。

直観で、「これは不本意にもチケットを売る権利を奪われたので、わざと知らないふりをしたのだ」と思った。この近さでは、そうとしか思えない。

以前、新聞スタンドで新聞や雑誌を売る権利って、どうなってるんだろうと思ってちょっと調べたことがあるが、もんのすごい競争率で、とても普通に申請するだけではゲットできそうになかった。

つまり、新聞スタンドの営業権は、とっても高値の花なのだ。そこにいろんな利権がからんでくることは十分あり得るし、また貸しに次ぐまた貸しで、権利がすごく複雑になっていることもあり得る。

だから、今回の件について、行政側がその権利の複雑さを「リセット」したかった、という可能性もぬぐえないと思う。
これはちょっと飛躍するけれど、北京ではかつて一部の新聞売りがアヘン配達人を兼ねていた時期があるらしい。何事も、巨大な利権が絡むとグレーゾーンが生まれやすいが、新聞スタンドもその渦の中心にあったのかもしれない。下手したらマフィアの摘発や政治の力関係なんかも絡んでくるかも?

憶測ばかりで申し訳ないけど、真相はどうせ闇の中だろうし、こういう推理をあれこれ重ねられることが中国関連のニュースを読む楽しさなのかも、とちょっと思ったりもする。