北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

明けましておめでとうございます
お陰さまで、今年の元旦は昆曲の大家、張毓文先生の舞台生活60周年を祝う舞台を鑑賞するという、素晴らしい体験をすることができました。

しかも舞台では、日本のお弟子さんが何人も、腕を披露。
そのほとんどが、北京留学中に昆曲を学び、
帰国後も諦めずに稽古を続けた方々です。

彼らの熱心さ、粘り強さ、国境を越えた昆曲への愛情、
そして張毓文先生の懐の広さ、昆曲への貢献度の高さ、
どんな時代にも日本のお弟子さんとの交流を貫かれた勇気、
いずれもほんとうに感動的でした。
しかも最後には、張先生自身が舞台に出て指導。

張先生は長らく直接舞台には立っておられなかった、ということで、
これもまた深い印象を残しました。

でも幸せな気分とは裏腹に、先ほど、保定のとある町のAQIが862という、信じ難い数になっているのを発見。北京も400‐500です。

感覚的に昨日は今日よりずっとましだったこともあり、公演中はただ夢中で、チェックを忘れていましたが、今考えれば、元旦も数値はそれなりに高かったのかもしれません。
だとすれば、俳優さんや笛の方などの喉にも、けっこう負担があったことでしょう。

今の北京で、喉を使う芸術は、時に命がけ。
昔、ある現代アート作家が「表現するための環境をまず守りたい」と言っていましたが、
石の彫刻と酸性雨の関係を出すまでもなく、
芸術を守るためには、比喩的な意味だけでない、文字通りの「環境」もとても大事なんだな、とつくづく思いました。


昨日演じられた『昭君出塞』の一場面