北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

天津ー静岡便は開通したのか

先日嬉しいことがあった。
北京で十五年近くのつき合いがある友人が、
いよいよ日本に旅行に行ったのだ。
彼女は、日本語を学んだわけでも、日本関係の仕事をしているわけでも、
日本文化と格別に親しんでいるというわけでもない。
旅行こそ好きだけれど、いわば、日本との関係でいえば、特別な接点はない人。

そういう友人が日本に気軽に遊びに行ける時代になったんだな、
と思うと感慨深かった。

厳密に言えば、反日騒ぎの起きた年も、今の状態に近かった。
その年も、その友達は日本旅行を予定していた。
ちょうど日本にいる、やはり中国とはほとんど接点がない友達も、
その頃、初めての北京旅行をしようかな、と言ってくれていたので、
私は「ほんとうにいい時代になったもんだ」と喜んでいたのだった。

だが間もなく、友人二人はいずれも旅行をキャンセルした。
理由は言うまでもない。
島騒ぎが下火になったころ、日本の友人の方は北京に遊びに来てくれたが、
北京の友人の方は、長らく二の足を踏んでいた。
それがやっと、出発したのだから、やはり感慨は深い。

もっとも、時代がほんとうに良かったのかというと、ちょっと微妙だ。
「市場」重視の必然的結果として、今中国で組まれている日本ツアーで、
価格が手ごろなものはいずれも「ショッピング重視」。
その友人も、自ずと買い物に便利な場所ばかりに連れて行かれ、
どうも話を聴くと、バスに乗っている時間とお店を巡っている時間ばかりが印象に残ったらしい。

「周りが買い物ばっかりしているから、つい私も買っちゃった」
とあっけらかんとしているけど、
もっと、日本のいろんな面を見てきて欲しかった私には、
なんだかなあ、という感じだ。

でも、同じような体験、
つまり本来はそんなにわざわざ買い物ばかりしたくなかったのに、
「何か周りの流れに逆らえなくて、つい買い物しちゃった」
という話を、私は日本に行った中国の友人から、
これまで少なくとも2回は聞いている。

お店の人たちにとっては嬉しいことなのだろうけれど、
やっぱりちょっと残念。

ところで、先日、いよいよ天津ー静岡便が就航したというニュースを目にした。
静岡空港なんて要らなかったじゃん、とずっと思っていた私は、ちょっと見直した。
やっぱり、せっかくあるんだから、一目見ておかなければ。

でも、どのサイトで、どの時期のフライトを検索してもチケットは完売か、入手不可。
本当に満席なの?

せっかく就航しても、「爆買い」ブーム中はとてもチケットが取れず、
ブームが終わったら休航でさようなら、
なんて嫌だなあ。