北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada


年明けましておめでとうございます。
北京は勢い抜群です。
空気の汚染度を示す指数が一時期600を越え、インターネットの規制も超強力で、
視界もネットも見通しがきかない年明けとなりました。

ちなみに、この写真に写っているのは、
昨年の春節明けに、西安の城門の上で撮った灯籠節の風景なのですが、
中国での滞在歴が長い方はあれっと思われるかもしれません。
青などの冷色系を中心とした灯籠は、中国では少ないからです。
きちんと調べていなくて恐縮ですが、
同時期に撮った他の写真と並べて推測するに、
これは恐らく、国際色を強めるため、西安の灯籠節の関係者が、
韓国の晋州の流灯節の関係者を呼んで、設置させたものだと思います。

流灯節は、その昔、豊臣秀吉が朝鮮に出兵した時、
晋州の金時敏将軍率いる軍が、
秀吉の軍に勝利したことを記念して始まったらしいので、
日本人としては心痛む歴史に由来する祭りでもあります。

でも、今は家族や恋人、友人の幸福を祈る催しとなっているらしいですし、
流灯節はもともと秋の祭りですが、
写真の灯籠は一応、中国で早春に飾られていたのものなので、
今年はもっと歴史を深く知る年にしたいという自戒の意味も込めて、
ご挨拶に使わせていただきました。
もちろん、昨年は韓国文化に親近感を覚えた年だったというのも、大きな理由です。

豊臣秀吉の朝鮮出兵については、地元浜名湖も無縁ではなかったようで、
「浜納豆」として知られる、浜松の特産物は、
出兵を控えた秀吉に献上されたことを機に、有名になったようです。
ゆえに韓をおさめるという意味あいから、
最初の頃は「韓納豆」とも呼ばれていたのだとか。

「浜納豆」は、中国でよく料理に使われる発酵調味料、
“豆豉(douchi)”に似た食べ物で、
京都の大徳寺納豆などと同じ、寺納豆の一種です。

この浜納豆の歴史を知った時、
遠く、昔のことに見えていた歴史事件も、
実は意外なところで自分たちと繋がっていることを、
強く感じました。

というわけで、
今年もよろしくお願いします。