北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

北京におけるみかんの地位の問題

こういう時だけは流行に乗って(?)ここしばらく風邪気味。昨日あたりからやっと風邪頭のモヤモヤが薄れてきたと思ったら、「締め切り間近」の現実が。なので、今日はつぶやき調。

久々に近所の子が遊びに来た。忙しいから構ってやれないのだが、家に親がいないという。
仕方がないので、家で自由に遊ばせておくが、独り言言いなががら遊んでいる様子がちょっとかわいそうになって、ついみかんをあげてしまった。元静岡県民としては、冬にみかんを食べるのは、水槽の魚が水草を突っつくくらい当たり前のこと。

でもその子は、「みかんは去火(ほてりを冷ます)なのよね〜」と若干困った顔。
(追記、実際は「みかんは上火(体がほてる)」論の方が中国では優勢らしい。近所の子の勘違いかな?)

ちょっとのけぞった。まだ幼稚園児なのに「去火」なんて言葉を使うなんて。大人の真似しているだけなんだろうけど、
こういうとき、自分は中国に住んでいるんだな、としみじみと感じてしまう。

でもおかげでやっと、北京でみかんの地位が微妙かつ不当に低い理由が見えてきた。南方から届く、ある程度は貴重な果物のはずなのになぜかな、と思っていたんだけど、食べすぎたら体に良くない、というイメージがあるからかもしれない。

それにしても、風邪の予防には一日みかん一個が一番、と思ってきた私には、何だかちょっと拍子抜け。やっぱり、基本はその土地でとれる果物がもっとも人間の体にも合っているってことなんでしょうか。

追記:その後ネット、および上海と北京の友人からの貴重な情報により、みかんは「上火(ほてる)」との論が主流であることが分かりました。つまり、体が冷えることよりほてりの方が心配ってことですね。それゆえに、子供に食べさせすぎてはいけない、という論もあるようです。ちなみに、同じ柑橘類でもブンタンは「去火」なのだとか。漢方の世界はまだまだ未知のことだらけだ、とつくづく思いました。