北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

東北旅行、続行中。

ネットが不便な環境にいるので、ここ数日、Gメールが見られません。ご迷惑おかけしている方がいらっしゃったら、たいへん申し訳ありません。遅くとも9月4日までにはふたたび見られるもようです。

ハルビンを巡った後、現在はチチハルに滞在中。
ハルビン訪問は2回目。大学の卒論で東北出身の作家、蕭紅を扱って以来、ハルビンはたいへん思い入れのある街。だから歩いていても、当時、ハルビンで作家としてのスタートを切った蕭紅をめぐるエピソードがあれこれと頭に浮かぶ。凍えたり飢えたりといった苦労話ばかりだけど、苦労しない物書きなんていないはず、と身の程知らずにも自分までぐいぐい巻き込んで同情する。

あこがれて久しいモスクワのアルバート街はもうしばらく歩けそうにないけれど、ハルビンの中央大街は今回、かなりゆっくりと歩けた。近年、とても整備されていて、ロシア関係のお土産屋さんが増えているのにびっくり。今はないはずのソ連のイニシャル入りの新品ウォッカ入れが売られていたりする。北端のスターリン公園のすぐ手前地下にはマクドナルド。ロシア民謡の後にマイケルジャクソン。今のハルビンは何でもあり。

二日目にFさん一行と合流。餃子とロシア料理と春餅に舌づつみを打つ。やっぱり賑やかな食事っていいもの。作りたてのクヴァスや白酒入りのチョコレートボンボンもハルビンならではの味。

先回訪れた冬のハルビンと比べ、今回は花の咲き誇る、木陰と川辺の風が気持ち良いハルビン。やっぱり一つの街への理解は、いろんな季節に訪れてこそ深まる。
人間を理解するのにも、いろんな気分や態度の時、例えば怒っている時と機嫌のいい時、笑っている時と泣いている時を知らないとダメなのと同じかも。

チチハル以降はまた相棒と二人旅。今日は野生の鶴を観に、湿地へ。
やっぱり湿地はいい。野生の鶴の保護は年々難しくなっているということで、鶴たちにいたく同情するも、夕方に市場の雑踏の中で檻に詰め込まれた食肉用のニワトリたちを発見してしまい、ふと
「私と丹頂鶴はどこがどう違うというのだろう。私の何が悪いというのだろう」
とニワトリの立場に立って思い悩んでしまう。
頭の上が赤いのも同じだしなあ。

チチハルでは、少数民族とみられる人たちを時おり目にする。じつは、東北地方の少数民族、エヴェンキ族の生活文化が絶滅していく様子を描いたドキュメンタリー「オルグヤ、オルグヤ」を観たばかりなので、複雑な気持ちになる。何が保護されるべきで、何が「消えても仕方ない」のか。しばし考え込むが、答えは出ない。