北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

蔡明亮の『郊游(ピクニック)』と監獄アート、そして唐山の磁器市場

毎度ながら、最近書いた記事についてです。

まず、インサイトチャイナの電子雑誌(有料)の映画コラムでは、
台湾の巨匠、蔡明亮の最後の劇場映画とされる『郊游(邦題:ピクニック)』を紹介しました。
http://www.insightchina.jp/newscns/emag/intro/32/
蔡明亮といえば、大学時代に台湾映画祭で観た『愛情万歳』で度肝を抜かれ、
その後DVDで観た『西瓜』の大胆な性描写にまたまたどぎまぎし、と、
その映像世界には驚かされてばかりでしたが、
この映画に関しては、現代の社会で生きるってどういうことだろう、とひたすらしんみり考えさせられました。

ある人が、3Dはあなたの描く世界のためにある、と蔡監督に言ったそうですが、ほんとうにこの映画が3Dで再現されたら、映画の世界から帰ってこられなくなりそう。
蔡監督がこれからは商業映画は撮らず、美術館で作品を展示したい、と言ったといわれるのも、この映画を観れば十分うなずけます。
それくらい、作家性が強く、再現された世界観の純度が高い。
観る者の時間感覚を狂わせてしまう、という意味ではロシアのソクーロフ監督の映画をスクリーンで観た時の衝撃も思い出しました。

また、こちらはFBとダブりますが、この秋から冬にかけての北京で目にしたいくつかの展覧会をめぐる記事もまとめました。あいまいさのもちうる豊かさと自由について、です。
http://artscape.jp/focus/10106054_1635.html
先回の記事とも関係してきますが、話題が話題なので、
アーティストたちの表現の空間が壊されませんように、とお祈りしながら書きました。

そして遅ればせながら、NHKラジオ中国語講座のテキスト、『まいにち中国語』1月号の口絵とエッセイでは、唐山市の磁器市場を紹介しました。
相棒が撮影した口絵の部分は試し読みできます。
https://www.nhk-book.co.jp/shop/main.jsp?trxID=C5010101&webCode=09101012014
唐山取材のこぼれ話については、長くなるのでまた日を改めます。