北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

年末締めくくりの旅ー上海

今年は不思議なめぐり合わせで、中国のあちこちを駆け巡ることになりました。
そして締めくくりは、中国東南部へ。
途中の上海から、法事のための帰国を一週間はさんだので、結局のところ、12月の頭からず〜っと流浪の民と化しています。しかも、連載や翻訳の仕事を持ち運びながら、取材もしながら、という旅なので、けっこう大変。

そんなわけで、ブログの更新が遅れてすみません。

今は福建省なのですが、とりあえず、最初に足を踏み入れた上海の話題を。

今回の帰国直前の上海滞在は、一日弱という短さだった上、まだゆっくり上海を見たことのなかった相棒と一緒だったので、豫園+外灘(バンド)というゴールデンコースに。


17年ぶりくらいになる豫園は、かなりがっかりでした。豫園の周りにあった弄堂がほとんど壊され、観光エリアとして新たに整備されてしまっていたからです。商店街の配置や雰囲気には、少し昔の面影があり、ほっとしましたが。

バンドでは、夜景を満喫した後、これもまた18年ぶりくらいに、和平飯店で老人ジャズを聴きました。

和平飯店は、前よりずっと高級なホテルとしてリニューアルされていて、ちょっとびびりましたが、ジャズの方は100元消費すればどれだけ聴いてもOK、ということで、ホッとしました。

それにしても、このバンドは感動させられるツボが、ちょっと普通のジャズライブと違います。演奏しているのは、ピアノを除き、いずれも60歳から70歳前後に見える方々。テクニック的には??でも、音に雰囲気があって、息も合っています。
何より、最高齢の70歳前後のおじいさんが管楽器のサックスを吹いていることに、感心してしまいます。私もフルートを子供の頃から吹いていますが、とても70歳まで吹き続けられる自信はありません。

それに、戦前戦後の中国が経た歴史を思うと、文革をどう乗り切ったんだろうとか、そもそもの最初はどんな環境でジャズを学んだんだろうとか、いろいろと想像が駆け巡り、それだけで感動してしまうのです。ただジャズを愛し続けること、それだけでもたいへんだった時代が長かったのですから、今まだ演奏できるというのは、並々ならぬ苦労の賜物に違いありません。

ちなみに、演目には「北国の春」も入っていました。日中の蜜月時代が思い起こされ、感慨ひとしおでした。ちなみに、この曲は日本語の曲をカバーした中国語の歌のうち、めずらしく歌詞が日本語の歌詞に忠実で、しかも老若男女、多くの人が日本の曲と知っている歌です。

後半は、欧米人のバンドによる、よりハイレベルの演奏も楽しめました。終電の関係で最後まで聞けず、とても残念でしたが、それも心残りとして、「また今度いつか」と思う原動力になるでしょう。

それにしても一年は早いもので、もうクリスマス。
ちなみに、今年のクリスマスは福建省の土楼で過ごします。
(次に続く)