北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

難民を描いた映画「Le chant des hommes」

昨晩北京のフランス文化センターで「Le chant des hommes」を鑑賞した。
http://www.cinenews.be/fr/films/le-chant-des-hommes/videos/56526/

ベルギーの映画で、邦題は『人間の歌』らしい。
主人公は、ベルギーで滞在許可を得ようとして何年も粘ったものの、放置され続けた、さまざまな国の難民たち。
彼らは教会でハンガーストライキをする。だが管理局側は、一部にしか許可証は出せないと言って譲らない。

リアリティあるのは、善意や考えの違い、利己心などにもとづく個々の参加者の判断が運動に影響を与え、何度も団結が緩みかけるところ。さすが、実話に基づいているだけのことはある。

ストーリーはシンプルだが、痩せ、疲弊していく人々の存在感に圧倒される。
内戦、異なる宗教への不寛容、女性蔑視など、難民たちが国を離れた理由はさまざま。
そんな彼らを、便宜上仕方ないとはいえ、「難民」という言葉でひとくくりにすること自体が、かなり乱暴なのだと、改めて思う。

彼らが牧師の話を聞いたり、イスラム式の祈りを捧げたりする姿も、印象的だ。

弱い立場の者たちは、人間にまだ良心があることをあくまで信じ続け、祈る。
長年得られず、今現在も目の前にない、「善なるもの」、「人を幸福にするもの」の存在をあくまで信じられる、というのは、
彼らが精神的にとても強いこと、そしてそういうものを信じられる環境で育ったことを意味するのだろう。

うちの相棒も繰り返しているような、裁判所への上訴と同じ。
何事も、信頼してもらえるうちが華。
良心的な措置が行われると、人々がずっと信じてくれるとは限らない。
不法な道に走らず、暴力的な手段も用いず、
法や制度、そして民主的な手段を頼りにしてくれること自体に、
まだ大きな救いがあるのに、とつい思ってしまう。

****

話は変わるが、春らしくなり、外をバイクで走るのもだいぶ爽快になってきた。
とくに、昔ながらの、看板の少ない通りを走るのが、ついよそ見をしてしまう私には、気が散らなくていい。

昨日は、満月につい目が行ってしまったけれど……。

しばらく北京を留守にしてから戻ってきて驚いたのは、レンタル自転車の普及度の急上昇ぶり。

いたるところでレンタルバイクの群れを見かける。
都心部では二輪車全体の2、3割くらいは占めているかもしれない。
若い人が目立つが、けっこう年配の人も乗っている。
シルバー+オレンジの車体と、黄色い車体のものが主流。
しかも、今は電動バイクもレンタルできるのだとか。

サービスが出てきたばかりの時、これは便利そうだとは思ったけれど、
ここまで普及するとは思わなかった。