北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

「地底の葬列」鑑賞会

参加者の一人として行った「地底の葬列」鑑賞会。

でも、内容があまりに興味深く、意義深かったので、つい記事にしてしまいました。
http://www.shukousha.com/column/tada/2932/

フィルムや講演ももちろんすばらしかったですが、質疑応答の時間を十分にとっていたのも素敵でした。

活発な質疑応答を聞きながら、かつて北京で日本のドキュメンタリーを流す上映会のお手伝いをした時のことを思い出しました。鑑賞後の感想をめぐるアンケートの集計を手伝った時、中国人の観客の方が寄せてくれた感想がほんとうに興味深かったからです。

特に、大自然に囲まれた辺鄙な土地で自給自足の暮らしをしているおばあさんの様子を記録した「タイマグラばあさん」という映画について、「私のおばあさんも、田舎で似たような生活をしている。その価値について考えた」という主旨の感想がいくつも寄せられたのには感慨を覚えました。日本では「ごく希少となった、自然と完全に一体化した暮らし」も、中国ではまだまだ「現在進行形の暮らし」なのだ、と。

そして嬉しかったのは、そういう、中国で往々にして「貧しい」とか「遅れている」だけで片づけられそうな暮らしが、彼らに「貴重だ、見直すべき価値がある」と捉えられていたことでした。置かれている状況はさまざまでも、価値観は国境を越えて分け合えるものなのだ、と確認できたからです。

もちろん、すべての価値観が同じでなくてはならない、とは思いませんが、少なくともお互いの価値観を深く知る機会はもっともっとあっていと思います。

というわけで、こういう試み、ぜひどんどんとやって欲しいです。