北京・胡同逍遥

北京、胡同で暮らした十数年間の雑記 by 多田麻美/ Asami Tada

スカンタコはなぜタコなのか

今朝、ふと思い出したことがある。

子供の頃、大分から静岡に嫁いだ母の口からは、時おり濃厚な大分弁が飛び出した。実家からの電話を取った時の母が、突然いつもとぜんぜん違う言葉で話し始めるのを、よく驚きとともに見ていたのを思い出す。母は受話器を取ると声が一オクターブ高くなる方だったが、どうも大分弁の時は半オクターブ止まりだったようだ。

そんな時、母にとっては電話で使っている言葉の方が明らかに「母語」で、ずっと感情が込めやすいみたいだった。そのギャップに唖然とした私は、何だか母が別の国の人だったことを急に思い出したかのような、不思議な気分になった。実際には私も、母が里帰りするたびに周囲から大分弁を浴びるように聞いていたので、言っている意味はだいたい分かったのだけれど。

同郷の人と話す時だけでなく、気持ちが昂った時にも母の大分弁は飛び出した。
よく覚えているのは、子供の頃、私が変な事をするとよく「スカンタコ」と怒られたことだ。
「もう、スカンタコやわ〜」って感じで。

その後、母の大分弁はだいぶ弱くなったので、下の妹などは、標準語で怒られていた。だから私も長いこと、「スカンタコ」なんて言葉は忘れかけていたのだけれど、今朝、近所の子供が親から怒られているのを聞いて、急に思い出した。

でも考えてみたら不思議だ。スカンは「好かん」、つまり「嫌いだ」という意味だとしても、なんで嫌われるのはイカでもエビでもなく「タコ」なんだろう。

こういうことは、気になりだすと頭から離れない。そこでネットで検索してみたら、関西出身者らしき方々が、「親の世代までは使っていた」、「今はほとんど聞かない」などとコメントしているのは見つかったけれど、なぜタコなのかまでは分からない。

方向がぶれまくったまま、さらに見て行くと、
何とドラえもんの秘密道具に「スカンタコ」があることを発見。
ウィキによれば「タコのような外観で、かけられた人は誰からも嫌われるスミを吐き出すことができる。効き目が強く、スミをかけられた直後から効果を発揮する」のだそう。

ああ、だからタコじゃないとダメなんだ、とここで納得してはいけないんだろうが、
ドラえもんの偉大さに改めて気付けたわけで、これはこれでよしとします。